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仙台地方裁判所 昭和36年(行)1号 判決 1961年12月20日

原告 鎌田治子 外一名

被告 宮城県

主文

被告は原告芳賀雅子に対し金百二十円とこれに対する昭和三十五年十二月十八日から完済に至るまで年五分の金員を支払え。

原告等のその余の請求を棄却する。

訴訟費用を二十分し、その十を原告鎌田治子の負担とし、その八を原告芳賀雅子の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実

原告等訴訟代理人は、被告は、原告鎌田治子に対し、金九百六十円及びこれに対する昭和三十五年十二月十八日以降完済に至るまで年五分の金員を、原告芳賀雅子に対し、金千三百二十円及びこれに対する昭和三十五年十二月十八日以降完済に至るまで年五分の金員をそれぞれ支払え。

訴訟費用は被告の負担とする、との判決を求め、その請求原因として、

一、原告等は、宮城県公立小、中学校の教育公務員であり、昭和三十年十一月一日以前より原告鎌田治子は昭和三十三年三月三十一日まで栗原郡高清水小学校に、原告芳賀雅子は同年十二月末日まで登米郡新田小学校にそれぞれ勤務していたものである。

被告は、市町村立学校職員給与負担法により原告等の給与(宿日直手当を含む)の支払義務者である。

二、宮城県においては、学校職員の給与に関する条例(昭和二十六年十二月二十日条例第六十九号、最終改正昭和三十四年七月条例第十号―土曜日直手当については終始変化なし)第十四条、第二十条、学校職員の特殊勤務手当並びに宿日直手当支給規程(昭和三十年十月教育委員会規則第八号)第四条(昭和三十二年十一月一日以降は人事委員会規則七―十七「宿日直手当の支給」第三条)により、市町村立学校職員が正規の勤務時間外に五時間未満の日直勤務をした場合一回につき金百二十円の手当を支給する。右手当の支給日は翌月の給料支給日である二十一日とする旨定められている。

三、被告は、かつて宮城県内公立小中学校職員全員に対し、土曜日直勤務について、前記条例及び規則により土曜日直手当を支給したことがあるにもかゝわらず、同一条例及び規則のもとにおいて昭和三十年一月一日以降昭和三十三年十二月末日までは右手当を支給していない。

四、原告等は各勤務校において別紙のとおり昭和三十年十一月一日以降昭和三十三年十二月末日までの間五時間未満の勤務時間外土曜日直勤務をなしたのであるから、原告鎌田治子は、八回分金九百六十円、原告芳賀雅子は十一回分金千三百二十円の手当請求権を有するものである。

五、原告等はその所属する宮城県教職員組合を通じ被告に対し要求を続けて来たが、基本たる条例、規則が全く改正されていないのに、昭和三十四年以降僅か一回につき三十円、或は五十円の土曜日直手当を支給する処置に出たにすぎない。

原告等は、昭和三十五年十二月十四日代理人横沢宇進美名義により土曜日直手当支給方を内容証明郵便をもつて催告し、右書面は昭和三十五年十二月十七日被告に到達したが、被告は全然回答をしない。よつて右日直手当金並びに催告書到達の翌日である昭和三十五年十二月十八日以降完済に至るまで年五分の遅延損害金の支払を合せ求めるため、本訴請求に及んだ次第である。

と述べた。

被告訴訟代理人は、原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。との判決を求め、請求原因中、

第一、第二項は認める。

第三項は認める。

被告は、昭和二十九年以降同三十四年までは、原告等のみでなく、被告の職員、県立学校の教員等に対しても同様に土曜日直の手当は支給していない。

第四項は否認する。

第五項中原告等がその主張の日横沢宇進美を代理人として、内容証明郵便による支給方の催告をしたこと、右内容証明郵便が、原告等主張の日被告に到達したことは認める、と答弁し、

更に次のとおり主張した。

一、原告主張の土曜日直勤務をした事実を否認する理由は、次のとおりである。

(一)  被告は、昭和二十九年四月一日より財政上の理由により土曜日の宿直勤務は土曜日の午後から翌日の朝までを一回の宿直勤務とし、同一人をもつてこれに当てることにし、昭和二十九年五月二十四日付人事委員会規則三―〇による事務局長の権限としてその旨の通知を発しており、従つて被告は土曜日直に対する予算措置をしなかつた。原告が本訴に於て日直手当を請求する期間中は、被告の職員、県立小、中学校教員は、被告の意向通り、土曜日の宿日直は同一人が勤務していたものであるから、原告がその主張のやうに土曜日直のみをしたことはない筈である。

日直手当は、その翌月の給料支払日に支払うことになつているからもし原告等がその主張のように日直勤務をしたとすれば、数年も放置してこれを請求しない筈がない。

(二)  昭和三十三年十二月当時の宮城県知事大沼康と宮城県教職員組合と交渉の結果、同月六日土曜日直手当については左記のとおり支給することの協定が成立し覚書を交換した。

昭和三十四年一月一日から 金 三十円

同     四月一日から 〃 五十円

同 三十五年四月一月から 〃 七十円

同 三十六年四月一日から 〃 九十円

同 三十七年四月一日から 〃百二十円

右協定は土曜日の日直と宿直は同一人がこれに当ることを前提としたものである。

右協定を実施するため昭和三十三年十二月二十六日人事委員会規則七―十七第三条二項に「土曜日又はこれに相当する日に退庁時から同一職員が引続き宿日直勤務を行う場合は前項但書の規定にかゝわらず五時間未満の勤務一回につき当分の間三十円とする。」との規定が追加された。

その後更に宮城県教職員組合及び宮城県高等学校教職員組合の要請もあつて、土曜日直について宿直勤務でない別人が勤務する場合でも前記協定通りの手当を支払うことになり、昭和三十四年五月二十九日学校教職員組合の要請によつて、前記規則第三条二項は削られ、同規則の附則として、

1  この規則は公布の日から施行し昭和三十四年四月一日から適用する。

2  土曜日又はこれに相当する日に日直勤務を行う場合第三条但書の規定にかゝわらず、当分の間五時間未満の勤務一回につき五十円とする。

と規定せられることになつた。その後、右附則は昭和三十五年四月一日より五十円のところを七十円に、同三十六年四月一日より同じく九十円に改められた。

以上被告と学校教職員組合との交渉、人事委員会規則の改定の経過において、昭和三十四年四月一日以前の土曜日直手当が問題にならなかつたことは、請求出来る土曜日直勤務のなかつたことを証明している。

(三)  学校職員の特殊勤務手当及び宿直手当の支給規程(昭和二十八年三月四日教育委員会規則第五号)第六条により学校長は日直手当及び宿直手当支給整理簿を作成し保管しなければならない事になつていた。

又昭和三十二年十一月一日学校職員に適用されることになつた人事委員会規則七―一七「宿日直手当の支給」(昭和二十八年二月十三日)第五条により任命権者は宿日直勤務命令簿を作成し保管しなければならないことになつた。原告等が日直勤務をしたと称する時期には、右規則により学校長は整理簿又は命令簿を作成することになつており、右整理簿又は命令簿によつて、毎月二十一日に前月の日直手当支給調書を作成して被告にこれを提出し、被告の支払担当官は右手当を支払つて来た。然るに被告は、昭和二十九年四月一日より同三十三年十二月まで県内の教員より土曜日直手当の請求を受けたことも、これを支払つたこともない。

今日整理簿、命令簿を調査しても原告等が、原告等主張の日に日直をした事実は見当らない。

二、仮に、原告等が主張の日に事実上勤務をしたとしても、右勤務は、当日、宿直を命じられた者(当時、土曜日の宿直勤務は土曜日の午後から翌日の朝まで同一人が勤務していたことは前述のとおりである。)との間の内部関係にすぎず、被告に対し日直手当を請求することは出来ない。

仮に、宿直を命じられた者との内部関係で勤務したものでないとしても、原告等は日直手当を請求しないという趣旨で勤務に服したのである。

即ち原告等が命令権者である勤務学校の校長より原告主張の日に日直を命ぜられ日直勤務に服したとすれば、それは学校長と原告等間に日直手当を請求しない合意が為された上、右勤務に服したものといわなければならない。

三、仮に、原告等に、その主張する土曜日直手当の請求権があるとしても、右権利は労働基準法第百十五条により二年間の経過で時効により消滅するから、本訴請求の手当中昭和三十三年十月未日以前に於て勤務したことによつて発生した日直手当請求権が消滅した。

原告等訴訟代理人は、被告の主張に対し、次の通り述べた。

一、被告が昭二十九年四月一日より土曜宿直勤務者をしてその日の日直勤務をも同時に行わせることにし、土曜日直手当の予算措置をとらなかつたという事実があつたとしても、かゝる行政措置は全く法的根拠を欠く違法なものである。人事委員会が設立された立法趣旨によつても右の如き行政措置は許されざるものである。

昭和三十三年十二月六日被告と教職員組合との協定によつて、同三十四年一月一日より土曜日直手当を支給するに至つたのは、被告が自ら違法な行政措置を認めこれを是正せざるを得なかつたためである。

二、宮城県公立小中学校教育公務員に適用される法規上土曜日の宿直勤務者と日直勤務者とが同一人でなければならないとする根拠がない。仮にあつたとしても、日宿直勤務を二人以上で実施してはならないと規定した法規もない。従つて命令により現実に土曜日直勤務と宿直勤務を別人によつて実施した以上は当然に各人が手当請求権を取得するに至るものである。

三、被告は整理簿、命令簿に記載ないことを理由に原告が原告ら主張のごとき土曜日直勤務を実施した事はないと主張するが、各学校日誌により原告等がその主張のとおり土曜日直勤務を実施した事実は明らかにされており、これには学校長の検閲承認の捺印がある。

また、整理簿、命令簿に記載がないとしても、それは被告が何等法的根拠なきにもかゝわらず、違法にも土曜日直手当の予算措置をとらず、違法な行政指導により昭和二十八年四月一日より日直命令簿にその記載させなかつたにすぎない。

四、被告訴訟代理人は、原告等は土曜宿直を命ぜられた者との内部関係において土曜日直をしたにすぎないと主張するが、内部関係という事はあり得ない。宮城県下の小、中学校においては、長年の慣行として土曜日直は女子職員が実施して来ている。

従つて、女子の職員の土曜日直勤務は、適法に校長の命令により実施したが、校長がその事実を黙認して来たのかいずれかであつて、いずれにしろ校長の命令で勤務したと言うべきである。

仮に被告が、主張のごとく土曜日の宿日直勤務者を同一人にさせるよう行政指導して来たとしても、それは校長の命令により土曜日直勤務をした原告らの関知しないところであつて、問題ありとすればその行政指導に従わなかつた学校長の責任である。

五、被告は二年の消滅時効を援用しているが、地方公務員の給与請求権の消滅時効は五年である。その理由とするところは、

(一)  地方公務員の日直手当請求権は、公法上の請求権であつて地方自治法第二百三十三条、会計法第三十条によりその消滅時効は五年である。

被告の見解は会計法第三十条にいう「他の法律」に労働基準法がはいるとして同法第百十五条を適用し二年の時効を主張しているが、労働基準法第百十五条は会計法第三十条の「他の法律」にあたらない。憲法第三十八条は財政の基本原則を明示しているが総じて抽象的であり当然附属章典を予定している。しかして財政法会計法は憲法施行前に制定されたもので、憲法はこの法律を附属章典として考慮している。故に会計法は、こと財政会計に関する限り憲法の附属章典として一般法に優位する。よつて、会計法第三十条の「他の法律」にあたるものは会計法と同格の会計財政を規律する目的に出た法律、例えば恩給法の如きもの以外にはあり得ない。労働基準法は財政会計を規律する目的に出たものでないから、会計法第三十条の「他の法律」には該当しない。会計法第三十条は国又は地方公共団体の債権債務の消滅時効を劃一的に五年として統一的に処理する目的で規定された立法趣旨から云つても地方公務員の給与請求権の消滅時効は五年であることは明白である。

(二)  また国家公務員の俸給請求権が会計法第三十条により、その消滅時効は五年であることは疑を容れない。ところが、同一公務員でありながら地方公務員の給与請求権に会計法第三十条の適用がなく労働基準法第百十五条によりその時効が二年であると解することは地方公務員法の立法趣旨に反し、また、平等原則から言つても不当である。

又地方公務員のうちの特別職の俸給請求権には労基法第百十五条の適用なく、地方自治法第二百三十三条会計法第三十条により、その消滅時効は五年であるのに、同一地方公務員でありながら一般職の俸給請求権の消滅時効が二年であるとすれば、特別職とのつりあいがとれないこととなる。

(三)  仮りに、地方公務員に労働基準法の適用があるとしても、同法は労働条件の最低の基準を保障したものであり、同法第百十五条は、民法で定めた給料債権の一年の消滅時効を二倍の二年とする考えで立法されたのであつて、従来会計法第三十条所定の五年の消滅時効の適用をうけていた地方公務員の俸給請求権の時効を二年に引き下げることを予想していなかつたものである。

(証拠省略)

理由

原告等は宮城県公立小中学校の教育公務員であること、原告鎌田治子は昭和三十年十一月一日より、昭和三十三年三月末日に至るまでの間栗原郡高清水小学校に、原告芳賀雅子は昭和三十年十一月一日より昭和三十三年十二月末日に至るまでの間登米郡新田小学校にそれぞれ勤務していたこと。被告は市町村立小学校職員給与負担法により原告等の給与(宿日直手当を含む)の支払義務者であること。宮城県においては、(一)学校職員の給与に関する条例第十四条、第二十条、(二)学校職員の特殊勤務手当並びに宿日直手当支給規程(昭和三十年十月教育委員会規則第八号)第四条(昭和三十二年十一月一日以降は(三)人事委員会規則第七―十七「宿日直手当の支給」第三条)により、学校職員が五時間未満の勤務時間外日直勤務をした場合一回につき金百二十円を支給する。その支給日は翌月の給料支払日である二十一日とする。と定められていること。被告は昭和二十九年四月一日以降同三十三年十二月末日に至る間、原告等および県内公立小中学校職員全員に対し、土曜日直手当を支給した事がないことは当事者間に争いがない。

そこで、原告等はそれぞれ別紙のとおりの日時、各勤務学校において勤務時間外に五時間未満の土曜日直をしたと主張するので按ずるに、証人橋本亮の証言によつて真正に成立したと認められる甲第一号証並びに同証人及び証人鈴木健吾、横沢宇進美の各証言、原告鎌田治子の本人尋問の結果を綜合すると、原告鎌田治子は栗原郡高清水小学校に於て、命令権者である校長の命令により別紙一、記載の日に八回の五時間未満の勤務時間外土曜日直を為した事実を認めるに充分である。

甲第一号証並びに証人橋本亮、横沢宇進美、原告芳賀雅子本人尋問の結果を綜合すると、原告芳賀雅子は登米郡新田小学校に於て、命令権者である校長の命令により別紙二記載の日に十一回の五時間未満の勤務時間外土曜日直を為した事実が認められ、証人伊藤亀市の証言その他の証拠によつても右認定をつくがえすことができない。

被告訴訟代理人は、人事委員会規則によれば、日直命令権者である学校長は、日直手当支給整理簿又は日直勤務命令簿を作成することになつており、これに基き日直手当支給調書を作成して被告に請求するべきところ、被告は昭和二十九年四月一日より同三十三年十二月まで、その請求を受けなかつた旨主張するが、証人大沼直治、横沢宇進美、伊藤亀市の各証言を綜合すれば、被告は昭和二十九年の四月から、予算の都合で土曜日直手当を支給しないこととし、県教育委員会がその旨県下の各出張所長に連絡したので、各学校長は、被告が土曜日直手当を支給しない方針なので、これを被告に請求しなかつたにすぎないことが認められるから、被告が学校長から土曜日直手当の請求を受けなかつた事実があるからといつて、原告らが校長の命令によつて土曜日直をしたことについての前記認定を左右することができない。

被告訴訟代理人は、仮に原告等が右認定のとおり土曜日直を行つたとしても、昭和二十九年四月一日より土曜日の宿直勤務は土曜日の午後から翌日の朝までを一回の宿直勤務とし、同一人をもつてこれに当てるべく、人事委員会事務局長が通知を発しているのであるから、原告らが土曜日の午後の日直のみをする筈がない。仮りに事実上土曜日の午後日直をしたとしてもそれは宿直を命じられた者との間の内部関係にすぎず手当を請求し得る日直勤務には当らない。と主張するので按ずる。仮に宮城県人事委員会事務局長が、被告主張の如き通達を発したことがあつたとしても、右通達が完全に履践されるとは限らないから、原告らが土曜日直したことに関する前記認定を左右することができない。

人事委員会規則三―〇によれば人事委員会事務局長の権限は条例及び規則の定めるところに従い細則を制定し通達を発することが出来るにすぎず規則を改正する権原はない。

従つて右通達があつたからといつて、現実に校長の命令により土曜日直を行つた原告等は条例並びに規則に定められた日直手当の請求権を失うものではない。

被告訴訟代理人は、原告と校長との間に手当を請求しないという合意がなされた上原告らは土曜日直をした旨主張するけれどもこれを認むべき証拠がないから右主張は採用することはできない。

被告訴訟代理人は昭和三十三年十二月以降人事委員会規則が幾度か改正された経緯をもつて、原告らが土曜日直勤務をした事実を否定するが、被告主張の経緯があつたとしても原告らの土曜日直勤務の事実を認定する妨げとなるものでない。

右事実によれば、被告は原告に対し本件土曜日直手当を支払う義務ありと言うべきである。

そこで被告の消滅時効の抗弁について按ずる。

地方公務員法第五十八条第二項によれば労働基準法中特定の規定を除き他はすべて地方公務員に適用する旨規定しており、同法第百十五条を除外していないから同条も地方公務員法の適用を受ける一般職の地方公務員(地方教育公務員をも含む)に適用されることは文理上明白である。そして原告等の土曜日直手当は、労働基準法にいうところの賃金に外ならないから(同法第八条第十一条)同法第百十五条により、右手当請求権は二年の経過により時効によつて消滅するものと言わなければならない。

ところで、原告等が横沢宇進美を代理人として、内容証明郵便をもつて本件日直手当の催告を為し、右催告は、昭和三十五年十二月十七日被告に到達したことは当事者間に争いがなく、本訴が昭和三十六年一月十九日提起されたことは記録上明白であるから、原告等の手当請求権の消滅時効は昭和三十五年十二月十七日中断されたというべきである。従つて、本訴請求の手当中昭和三十三年十二月十七日以前に弁済期の到来した分は時効により消滅したものと云わなければならない。

よつて、本訴請求のうち昭和三十三年十月末日以前に勤務した土曜日直に対する手当請求権はいづれも同年十一月二十一日以前に弁済期が到来しているから、時効により消滅したこと明かである。

しからば原告鎌田治子の本訴請求はすべて失当であり、原告芳賀雅子の本訴請求の中昭和三十三年十一月十五日の土曜日直勤務に対する手当金百二十円についてのみ理由があり、その余の請求は失当である。

よつて原告らの本訴請求中原告芳賀雅子に対し金百二十円とこれに対する弁済期日後である昭和三十五年十二月十八日より完済に至るまで民法所定の年五分の割合の損害金の支払を求める部分を認容し、その余の請求は棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八十九条、第九十二条本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 新妻太郎 太田実 矢部紀子)

(別紙)

土曜日直回数表

一、原告鎌田治子の分

昭和年月日

昭和年月日

三〇、一一、一二

三一、六、九

三一、八、二五

三二、一、五

三二、六、一五

三二、七、二七

三二、一〇、二六

三三、一、二五

二、原告芳賀雅子の分

昭和年月日

昭和年月日

三一、四、二八

三一、七、七

三一、一一、一七

三二、二、二

三二、二、一六

三二、五、一一

三二、七、六

三二、一二、二一

三三、八、二三

三三、九、二〇

三三、一一、一五

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